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毎日のことだから…。設計士が唸る『神動線』と、ため息が出る『残念動線』

2025.08.03

毎日のことだから…。設計士が唸る『神動線』と、ため息が出る『残念動線』

「このドア、逆開きだったらなあ…」 「洗濯物を干しに2階へ上がるのが、地味に大変…」

暮らし始めてからふと気づく、毎日の『小さなイライラ』。その原因の多くは、家の設計における**「動線(どうせん)」**に隠されています。

動線とは、家の中を人が移動する軌跡を線で結んだもの。つまり、暮らしの「流れ」そのものです。この流れがスムーズでないと、日々の家事や生活に無駄な動きが生まれ、気づかぬうちにストレスが溜まっていきます。

今回は、知らず知らずのうちに暮らしを不便にする**「残念動線」のよくあるパターンと、建築士が「これは見事!」と唸るような、暮らしを劇的にラクにする「神動線」**のアイデアをご紹介します。

 

まずは避けたい!ため息が出る『残念動線』あるある

残念導線イメージ画像

間取り図だけでは素敵に見えても、実際に動いてみると「あれ?」となる。そんな残念動線の代表例を見ていきましょう。

  • ① 洗濯動線の「大移動」 1階の洗面所で洗濯 → 2階のバルコニーで干す → 1階のリビングで取り込んで畳む → 各部屋のクローゼットにしまう…。洗濯という一つの家事のために、上下階を何度も行き来するパターン。毎日のこととなると、大きな負担になります。
  • ② キッチンでの「渋滞」と「遠足」 冷蔵庫から食材を出し、シンクで洗い、コンロで調理する。このキッチンの基本動作がバラバラの場所に配置されていると、数歩の無駄な移動が積み重なります。また、冷蔵庫の前に誰かが立つと通路が塞がれてしまう…なんていうのも、よくあるキッチンの渋滞です。
  • ③ 「ただいま」からの障害物競争 玄関に帰宅し、買い物袋を持ったままリビングを横切り、ようやくキッチンへ。脱いだコートをとりあえずソファに置き、手を洗うためにまた廊下へ…。帰宅後の「片付け」や「身支度」の流れが考慮されていないと、リビングが散らかる原因にもなります。
  • ④ お客様に「裏側」を見られちゃう動線 お客様をリビングにお通しし、「お手洗いはあちらです」と案内した先が、脱衣所やプライベートな収納のすぐ隣…。生活感あふれるエリアが見えてしまうと、お互いに少し気まずい思いをしてしまいます。

 

暮らしが劇的に変わる!設計士が唸る『神動線』のアイデア

神導線イメージ画像

では、どうすればこれらの残念動線を解消できるのでしょうか。答えは、家事や生活の動きを「一筆書き」のようにつなげる設計にあります。

  • 【神動線①】洗濯はここで完結!『ランドリー動線』の要塞化 「洗う→干す→畳む→しまう」を、すべて同じ場所か隣接した空間で完結させる動線は、もはや神動線の代表格です。「洗面脱衣室」の隣に、室内干しができる「ランドリールーム」や、そのまま衣類をしまえる「ファミリークローゼット」を配置する間取りは、家事の負担を劇的に軽減します。
  • 【神動線②】スムーズな連携プレー!『回遊できる』キッチン キッチンの周りをぐるりと回れる**「アイランドキッチン」や「ペニンシュラキッチン」**は、複数人での作業もスムーズ。片側が塞がっていても、もう一方から回り込めるため、キッチンの渋滞が起こりません。パントリー(食品庫)が隣接していれば、料理の流れも最高にスムーズです。
  • 【神動線③】『ただいま』が気持ちいい、玄関からのショートカット 玄関から、**①シューズクロークを通ってそのままパントリーやキッチンへ直行できる「おかえり動線」**と、②すぐに手を洗える洗面所へ向かう動線を分けるのが理想です。これにより、荷物の片付けも、身支度もスムーズになり、リビングに余計なものを持ち込まずに済みます。
  • 【神動線④】おもてなし上手の『パブリック・プライベート分離』 お客様が主に過ごすLDKや客間、お手洗いなどの**「パブリックゾーン」と、家族が使う寝室やファミリークローゼットなどの「プライベートゾーン」**を、廊下や扉で緩やかに区切る設計です。これにより、お互いが気兼ねなく、気持ちよく過ごせる空間が生まれます。

 

まとめ:良い動線は、良いシミュレーションから生まれる

リビングの神導線画像

「神動線」のある家は、特別な広さや豪華な設備がなくても、日々の暮らしに驚くほどのゆとりと快適さをもたらしてくれます。

そのために最も大切なのが、前回の「コンセント」の話とも共通する、**「新しい家での暮らしを、具体的にシミュレーションする」**ことです。朝起きてから夜寝るまで、平日と休日、自分たちがどのように動き、どこで何をするのか。その一つ一つの動きを設計図の上でなぞってみることが、残念動線をなくし、理想の暮らしを実現するための、何よりの近道です。

私たち千種建築は、そんな目に見えない「暮らしの流れ」を何よりも大切にし、お客様一人ひとりの生活に寄り添った動線設計を心がけています。間取りのことでお悩みなら、ぜひお気軽にご相談ください。